保護活動が活発になってきた近年、愛護団体や保護ボランティアに対して里親候補者を装い詐欺行為を行うケースが増えてきています。被害を防ぐため、傷付けられないために、里親さんに対しても慎重に判断することが大切な時代になってしまいました。

里親詐欺

里親募集されている猫や犬に対し「里親になります」などと、保護とは別の目的を持って譲り受けようとする詐欺のことを指します。無償または数万円で譲り受けることができるため、このような詐欺が起こりやすくなってしまいます。譲渡した後に連絡が途絶えてしまったり、不審に思った保護側によって発覚するケースが多く、被害件数は増加しています。実際に、里親になると偽って譲り受けた犬や猫を虐待したとして逮捕された事件もあります。

里親詐欺の目的

  • 虐待目的
  • 転売して儲ける
  • 食肉にして食べる
  • 実験動物として売る
  • 毛皮として売る

一番多い目的は「虐待」です。また、私たちの暮らしには馴染みのない食肉利用や実験動物も意外と多いのが現状です。実験動物として猫であれば1万円前後で取引されてしまうので、無償での譲渡の場合、儲かる仕組みになっています。実験動物への利用を防止する意味でも譲渡の際に、医療費や寄付金としてお金をいただくことがメジャーになっています。
また毛皮に関しては、猫やウサギが標的になりやすいといえます。猫は三味線の皮に、ウサギはファーとして用いられるため取引されるケースが多いのです。

巧妙な手口

家族と同居している典型的な構成で、持ち家があり、常に誰かが面倒を見れる、以前も飼っていたなど申し分ない条件を並べてきます。譲渡側から見ると大切に保護し面倒を見てきた、いわば自分の子供とも言えるような子たちを、大切な家族にしてもらえる理想的な里親さんです。

そんな詐欺師が溢れているのがネットです。
SNSや掲示板、里親募集サイトを介してコンタクトを送ってきます。下記のような点に気を付けてみるといいでしょう。

  • 開設してから新しいアカウント
  • 複数の犬猫にコンタクトを取っている
  • 家族構成や話の矛盾
  • 自宅や部屋の視察を拒む
  • 自宅外での譲渡指定
  • 身分証の提示や控えを拒む

私が実際に里親募集サイトに掲載した際、身体ハンデがある子にも関わらず積極的なアプローチをいただき連絡をやり取りしていました。顔写真も載せておられて、ご年齢も若く、家族構成なども申し分ありませんでした。ただ、アカウントを掘り下げてみると他の猫ちゃんにもコンタクトを取っていました。そのことを疑問に思い、率直に聞いてみるとそこで一方的に会話を切られてしまいました。
目的はわからないものの被害を未然に防げたことに安心しましたが、同時に、他でコンタクトを取っていた猫たちのことが心配でなりませんでした。アカウントは通報しましたが、こういったケースはしょっちゅう耳にします。氷山の一角に過ぎないのです。

対策

残念ですが、完璧な対策はありません。
ただし、絶対にネットやSNS上のやり取りだけで譲渡先を決定しないでください。
性悪説で疑ってかかってください。

また下記を参考に、信頼できる里親さんを見極めていただければと思います。

  • 家を見せてもらう、または里親さんの自宅で譲渡契約を行う
  • 送られてきた画像がフェイクや拾い画像ではないか確かめる
  • 身分証を提示してもらう
  • 必ず連絡の取れる連絡先を交換してもらう
  • 譲渡前に1週間〜1ヶ月のトライアル期間を設ける
  • 1ヶ月に1度、半年に1度でも写真を送ってもらう

ただ、正直これは里親を考えている方にとってはどれもウザくて面倒な項目です。「あなたを疑ってるから実際に家を見せてくれ」なんて不愉快ですからね。
頭ごなしに「これをしてくれないと譲渡できない!」ではなく、こういった事例や事件があったので慎重になっていること、大事に保護してきた子だからこそ安心して譲渡したいこと、面倒をかけてしまうけれどそれだけ真剣に探していること、を候補者の方に丁寧に説明してあげてください。
家族を探しに来てくれた方なら、きっと届くはずです。

里親をお考えの方へ

譲渡元の方々に個人情報や家のことを伝えることは、すごくストレスだと思います。適した人間かどうか、知らない人にジャッジされているような気分になりますよね。私も何度か経験があるので、とてもわかります。

ただ、いざ譲渡側になった時、本当に誰を信用していいのかわからなくなったのも事実です。保護した子が痛い思い、怖い思いをしたら、もしも殺されてしまったら。譲渡する人を決めたのは私です。きっと私は私をずっと許せずに生きていくでしょう。

この記事を読んでくれているあなたは、虐待など考えていないでしょう。ただ、あなたのことを全く知らない人からすると、あなたが良い人だという判断材料が必要になってしまいます。すごく面倒だとは思いますが、譲渡元の方々が気持ちよく送り出せるよう、前向きにご協力いただければ本当に本当に嬉しく思います。

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