犬の感染症予防は、飼い主の重要な責任のひとつです。今回は犬たちが感染しやすい一般的なリスクと、4つの予防法をご紹介します。お散歩やドッグラン、犬旅など、外に出る機会の多いワンちゃんたちのために、基本的な対策はとっておきましょう。
① ウイルス性感染症
7つの病気と特徴
- 犬ジステンパー
- 犬パルボウイルス感染症
- 犬伝染性肝炎
- 犬アデノウイルスⅡ型感染症
- 犬パラインフルエンザ感染症
- 犬コロナウイルス感染症
- レプトスピラ症
主な犬の感染症はこの7種類です。下記に特徴をまとめてみました。
犬ジステンパー | 犬パルボウイルス感染症 | 犬伝染性肝炎 | 犬アデノウイルスⅡ型感染症 | 犬パラインフルエンザ感染症 | 犬コロナウイルス感染症 | レプトスピラ症 | |
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症状 | 高熱、鼻水、下痢、嘔吐 | 嘔吐、血便、衰弱 | 嘔吐、下痢、扁桃腺の腫れ | 肺炎、呼吸器症状 | 激しい咳、風邪症状 | 胃腸炎、嘔吐、下痢 | 黄疸出血型/カニコーラ型 |
感染源 | 空気感染、排泄物 | 排泄物や嘔吐物の接触 | 排泄物、唾液 | 空気感染、接触感染 | 空気感染、接触感染 | 排泄物の接触 | 感染動物やネズミの尿 |
死亡率 | 高 | 高 | 中 | 低 | 低 | 低 | 中 |
特徴 | 子犬に多く冬に発生しやすい | 感染力が高く石鹸やアルコールも無効 | 目の白濁や急性肝炎もある | 他のウイルス感染で致死率が上がる | 感染力が非常に高い | パルボウイルスとの同時予防が重要 | 人畜共通感染症 |
人や猫への感染 | 人は稀、猫は感染しない | 感染しない | 感染しない | 感染しない | 感染しない | 感染しない | 人は感染する、猫は稀 |
予防方法
ワクチンを初回は2〜3回接種し、その後は年1回の接種で効果が持続します。必要に応じた種類のワクチンを検討してあげてください。ただし、ワクチンにも副作用がありますので獣医さんに相談して接種を検討してくださいね。
5種混合ワクチン | 6種混合ワクチン | 10種混合ワクチン | 単体 | ||
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コアワクチン | 犬ジステンパー | ||||
犬パルボウイルス感染症 | |||||
犬伝染性肝炎 | |||||
犬アデノウイルスⅡ型感染症 | |||||
ノンコアワクチン | 犬パラインフルエンザ感染症 | ||||
犬コロナウイルス感染症 | |||||
レプトスピラ症(4種 ) |
② 狂犬病
全哺乳類への感染が認められていますが、犬が蔓延源です。極度の興奮や攻撃性の高まりが起こり、後に麻痺して水さえ飲み込めなくなります。
犬だけでなく人も、致死率は100%の恐ろしい病気です。
近年の日本では報告されていませんが、アジア圏や世界でみると身近に症例があります。
日本では法律で、年に1回の予防ワクチン接種が飼い主に義務付けられています。
犬の登録情報をもとに4月〜6月末の間に接種するようお知らせが届きますので、市区町村への犬の登録はもちろん、狂犬病予防も必ず行いましょう。
③ 外部寄生虫
ノミ
猫や犬などの、動物から吸血します。高く跳ね回る黒い点のヤツです。外で人に引っ付いて家までやってくることもあります。吸血のたび5個前後の卵を産み、卵は寝具や畳の隙間などで孵ります。
アレルギー性皮膚炎や、腸管に寄生するサナダムシ(瓜実条虫)の寄生など、人にも影響のある病気の原因を運んできます。
マダニ
ノミと同じく吸血する虫ですが、一度食いつくと皮膚に引っ付いたまま吸血し続け、その体はパンパンに膨れ上がります。半袖などで草むらなど入って噛まれたというケースは多いですよね。
マダニは皮膚に噛み付くと、セメントの様な液体を注入し皮膚と口先をがっちり固めます。引っ張っても取れず、皮膚トラブルになりますので必ず病院で処置してもらいましょう。
ライム病や犬バベシア症など、死に至る恐れのある病気の原因にもなりますので、必ず対策をしておきましょう。
予防方法
春〜秋にかけて毎月1回、首の後ろに滴下するタイプの液体薬を使用します。外に出る機会の多い子など、心配であれば年中行っても構いません。
ノミやダニのような外部寄生虫だけでなく、内部寄生虫を駆除・予防できるものもありますので、獣医さんと、どこまでのカバーが必要かを相談した上で毎月のケアを行なってください。
④ フィラリア症
フィラリアとは
心臓に寄生する虫のことです。フィラリアは「蚊」を媒介して、犬・猫・フェレットなどに寄生します。
フィラリア症の犬猫から血を吸った蚊が、他の犬猫の血を吸った時に幼虫を体内に産みつけます。
体に入ると、心臓へ移動し、成虫になると細長い素麺の様な形状になります。
確実な治療法はないため、一度感染すると、治療にはリスクや危険を伴います。直接虫を取り除く手術をする場合もありますが、初期であれば薬を使って徐々に虫を殺していきます。ただ発見が遅い場合や宿主が高齢などの場合であれば、一生の付き合いになってしまいます。また虫によって受けたダメージは治ることがありません。
心臓への負担はもちろん、呼吸困難や嘔吐、体重減少が見られます。また、腹水によるお腹の膨らみ、尿が赤いなどの症状もあります。外にいることの多いワンちゃんは感染のリスクが非常に高まります。
予防方法
5月〜12月の毎月1回、お薬を飲むことで予防できます。最近は美味しく味付けされたものもありますので、おやつ感覚で与えることが可能です。
例えば投薬前の6月に感染した蚊に刺されていたとしても、7月の投薬で体内の幼虫を駆除することができます。
ただし、既に感染した状態で予防薬を飲ませると一度に大量の虫が駆除され死骸が血管に詰まったり、ショックを起こして死亡するケースがあります。
そのため投薬を開始する際は、必ず血液検査でフィラリアに感染していないか確認しておきましょう。