里親になるには正式譲渡の前に「トライアル期間」というものがあります。いわば結婚前の同棲生活のような、新しい家族になるための相性確認を前提としたお試し期間のことです。ほとんどの場合、譲渡後のトラブルを避けるためこの期間が設けられます。犬や猫にとっても性格や生活スタイルの相性というのは必ず存在します。トライアルが設けられていない場合、譲渡元に何らかの理由があるはずですので、可能な限りトライアルの内容を確認し、実施してもらいましょう。
トライアル期間
概ね、1週間〜1ヶ月で設定されています。
人馴れしている子であれば1週間程度、身体ハンデがあったり、譲渡先が多頭飼育の場合は1ヶ月程度に設定されることが多いです。
同居の家族にアレルギーが発覚した場合や、予定より少し長く様子をみたい場合などは、トライアルの期間を調整してもらいましょう。
準備
脱走防止
はじめはケージ内で新しい環境に慣れさせていきます。扉や窓に注意し、必要に応じてネットや防止柵を設置します。
生活環境を整える
ご飯のお皿やトイレを設置し、食べ物や誤飲する可能性のあるものは片付けておきましょう。電源コードなど危険なものも隠しておきましょう。また、意外と見落としやすいのは「花」です。特にユリ科の植物は犬猫にとって毒ですので、飾らないようにしておきましょう。
安心できる場所を用意する
トライアル開始時は強いストレスがかかります。人間でも、初めてくる場所や知らない人だらけの場所は緊張しますよね。譲渡された子が普段から使用している毛布やタオルなど、その子の匂いがついたものを置いてあげるといいでしょう。猫の場合は身を隠せるサイズの段ボールなどを置いてあげると安心することが多いです。
5ステップ
① 新しい環境に慣れてもらう
新しい環境で不安が大きくならないよう、最初は付かず離れずで見守ってあげてください。特にトラウマを経験している可能性がある子は、ある程度の時間が必要です。最初はケージに、次は部屋に、と順番に慣れていくまで焦らずゆっくり待ってあげましょう。
② 健康管理
環境の変化は大きなストレスがかかります。体調に変化がないかしっかり観察することが大事です。猫ちゃんの場合、慣れるまでご飯やトイレは人が見ていない時に済ませようとする子もいますので、過度に心配しすぎず、席を離れて少し経ってから再度確認してみましょう。
③ コミュニケーションに挑戦
最初は顔を覗き込まずに手のひらを下に向けた状態で、犬や猫の目線の下から、手の甲の匂いを嗅がせてみましょう。挨拶から始めることが肝心です。この時の反応を注意深く観察し、ストレスのサインを見逃さないようにします。リラックスしている時にだけ、交流を試みましょう。
④ 徐々に慣れさせる
急激な変化はストレスの原因となるため、新しいものに徐々に慣れさせることが大切です。短時間から始めて、徐々に交流の時間を延ばしていきます。先住の犬猫がいる場合は、急に会わせるのではなくケージ越しにお互いの存在を知らせていきます。絶対に無理はさせないでおきましょう。
⑤ 正式譲渡
生活や環境にも慣れ、トライアルでお互いに問題がなければ、保護団体から正式譲渡ということになります。
トライアルの失敗
たとえお迎えの準備を万端にして、愛情を注いだとしても、残念ながらトライアルは失敗に終わることがあります。
- 新しい環境へのストレスや不安による適応失敗
- 攻撃性や破壊行動など問題行動の発生
- 譲渡後に健康上の問題が判明し対応しきれない場合
- 同居している家族がアレルギーを発症した
- 勤務時間や生活スタイルとの不一致
- 先住の犬猫との相性が悪い
- 理想としていた期待と実際に過ごした生活のギャップ
人と犬猫、お互いのどちらかがストレスに感じてしまった時点で、トライアルは失敗といえます。ただ、珍しいことではありませんし、今回上手くいかなかったからといって決して諦めることではありません。
保護団体に連絡し、正直に状況を報告します。迅速に引き取りの手配をしてくれるでしょう。また、今回の結果を踏まえて他の子とのトライアルを調整してくれたり、次回に活かせるアドバイスをくれるはずです。